Monthly Archives: 1月 2015

目にしているものを味わっている

「人を見た目で判断しては駄目よ」と言われるのは、無意識にそうしてしまうことを示しているからでしょう。食べものの見た目も、同じことが言えます。

「最新脳科学でわかった五感の驚異」第5章に「目にしているものを味わっている」という項目があって、ジュースの色を見ることができないようにしたら、味の正解率が20パーセントにもさがってしまうことが紹介されています。こういったことから、見た目8割ということが言われるようになったのでしょうね。

一部抜粋すると、
『たとえば、市販のフルーツ味飲料(チェリー、オレンジ、ライム、グレープ)を四つのグラスで出されたら、そのすべての風味をつねに正しく答えられるはずだ。ところが、それぞれのジュースの色を見ることが出来ない場合は、味の正解率が20パーセントにも下がってしまう。そのジュースのにおいや味を一切変えない場合ですらそうだ。さらに、もし色を取り替えて、チェリージュースはオレンジ色、オレンジジュースは緑色などとした場合は、味覚がそのジュースの色に左右されてしまう。オレンジ色のライムジュースはライムというよりオレンジっぽい味がするし、緑色のオレンジジュースはオレンジだけでなく、ライム味に感じられる。』

 また見た目の濃さは、実際に感じる味の濃さや、食材の新鮮さを感じるのにも影響を及ぼしているそうです。これらは私たちが「感じていた」ことばかりだと思いますが、どれくらい影響を受けているのかといった数値で示されると説得力が増します。今まで無意識の世界で感じていたことを意識の世界に上手く活用するのは、やはり「意識する」ことが重要ではないかと思います。

<参考書籍>
「最新脳科学でわかった五感の驚異」Lawrence D. Rosenblum 著、齋藤慎子訳、講談社、2011

脳科学と五感の驚異

Lawrence D. Rosenblum 著、齋藤慎子 訳「最新脳科学でわかった五感の驚異」(講談社)は、脳科学の進歩が五感を深く解き明かしていることを教えてくれました。

私が最も興味を持ったのは、感覚器官は各機能である聴覚、嗅覚、味覚、触覚、視覚に基づいて構成されているけれど、脳はどの感覚から入ってきたかには頓着しないということです。
とにかく、知覚脳のことを知るにつれて、多感覚知覚のこの卓越性が多くの機能にあてはまっていることを実感できるようになってくる。これはなにも脳が、見ているものと聞いているもの、においを嗅いでいるものと触れているものに気づかないようにさせている、ということではない。知覚のもっとも重要な側面、つまり、この世界を上手に渡っていけるように動作を導くという点で、わたしたちがその世界を見ていようが触っていようが、脳はあずかり知らない、あるいは気にしない、というだけのことだ。
 

これを味覚障害による食事の味が変わることにる食欲不振に当てはめると、実は脳は味覚からの情報では判断していないし、脳にしてみればどこからの情報なのかは関係ないので、味を味覚以外の五感の代償により脳に認知させ食欲不振を軽減できる可能性を示していると思います。しかも五感の代償機能はだれにでもあるというのですから、五感による代償機能を使わない手はないはないでしょう。

このように五感が科学的に証明されることにより、これまで思われてきた個人的な特殊能力、感覚、好み、思い込みといった非科学的分野(?)から一気に脱却させてくれそうな気がします。因みに潜在的能力は無意識の世界にあるので、代償機能として使うには他の知覚で代償できることを信じて練習することが必要なのだそうですよ。何がどのようにして代償するかについては、障害者の代償機能事例を研究で証明したり、錯覚のメカニズムを解き明かすなどで詳細に書かれています。このように脳科学の研究が進歩することで、いままで科学的にちょっと自信がなかったことも根拠をもって新たなアドバイスに活かすことができるのではないかと思います。そうそう、素振り、画像を見る、イメージトレーニング、反復練習などによってどのような情報を得たり脳自体がどんな反応をしているかなども書かれているので、脳のことが分かると練習も楽しくなるような気がします。

しかし、今までこうした潜在的能力が話題にならなかったのは何故でしょうか?

どうやら、脳がはたらいている様子を見ることができる 技術の進歩 があってこそ、知覚能力について重要なことがいくつも明らかにできるようになったようです。アメリカでは1990年を皮切りに、脳科学研究を支援する政策が約10年間隔で次々に展開されているようですし、日本においても1996年に文部科学省が「脳科学の時代」として研究会を発足、翌1997年に脳科学委員会により「脳に関する研究開発の長期的な考え方」が検討され、戦略目標タイムテーブルが策定されています。ここが日本における脳科学研究の戦略的推進と発展の幕開けでした。「脳を知る」「脳を守る」「脳を創る」「脳を育む」の4領域で具体的な研究開発目標が設定されていますが、この4領域の設定はとてもシンプルでわかり易いですね。「21世紀は脳科学の時代」と言われており、アメリカやEUが争うように研究を加速させているようです。日本は21世紀に入ってから大学院などに脳科学の研究センターなどが設立がすすめられ、4領域の研究開発目標の達成に向けて取り組んでいるようですが、文部科学省はアメリカやEUの動向を大変気にしているようです。とてつもない可能性を秘めた研究分野なのでしょうね。

因みに、理化学研究所の脳科学総合研究センター(理研BSI)は、我が国初の脳科学総合研究機関として1997年に設置されています。理研BSIのホームページを見ると、「怖い体験が記憶として脳に刻まれるメカニズムの解明-扁桃体ニューロンの活動とノルアドレナリンの活性が鍵-」や、「危険に対して冷静かつ適切に対処できるようになるための神経回路を発見-手綱核-縫線核神経回路によるセロトニン制御がカギ-」がプレリリースされています(2015.1.4現在)。人間の感情や態度に関わるテーマが脳科学で明らかにできる時代になったことに改めて驚きを感じるとともに、世界中でどのようなテーマが扱われているのかを考えるとワクワクしてきます。

<参考書籍>
「最新脳科学でわかった五感の驚異」Lawrence D. Rosenblum 著、齋藤慎子訳、講談社、2011
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このサイトをつくる段階で参考にした本は、「食べるインテリア」、「図解雑学 よくわかる色彩心理」、「五感で楽しむ食―3つ星レストランの「食・食文化」がわかる!!」、「五感で学ぶ食育ガイド キッズ・キッチン」、「五感のふしぎシリーズ 味のふしぎ百科1」、「陶器の器 盛り付けの心得」です。これらはどれも五感が相互に関係し合っていることや、五感と心理的効果を知ることで生活を豊か感じられることを教えてくれました。
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食欲不振の悩み

早期発見やがん治療の進歩により “がん=死” ではなくなってきています。かつての結核のように「昔はがんは不治の病だった」と言われる日が訪れるように、日々世界中で多くの専門家がさまざまな研究や治療・看護に取り組んでいます。一方で生存期間の延長は治療期間あるいは経過観察の延長を意味しており、その間の精神的、身体的、経済的問題は、”生きること” に伴う深刻な悩みとなっているように思います。

食欲不振は大きな悩みのひとつと言えます。多くの抗がん剤治療や放射線治療が外来通院で受けられるようになりましたが、治療に伴って出現する食欲不振や味覚障害などが退院後の家庭生活の中で自覚されるようになったという一面が生じさせました。

静岡県立静岡がんセンター『Web版がんよろず相談Q&A』⇒ http://www.scchr.jp/cancerqa.html の、がん相談で食事に関する閲覧数の年間推移をグラフにしてみました。この二つの項目は閲覧項目のトップ10に入っており、しかも年々そのランクが上がってきています。

食べることは生命の維持を強くイメージさせるものなので、食のQOL向上に結びつく新たなアドバイスの必要性をひしひしと感じています。